世界遺産のそばにある廃墟

 中城城跡は世界遺産である。大人300円の入場料を払って どんどん奥に進む。一番奥まで進んだところで、 朽ち果てた建造物に出くわす。 何じゃこれは。

 いたるところが落書きされ、オバケが出てきそうな 雰囲気を漂わせている。中城城跡と区別する壁や囲いがないので、 これも世界遺産かと勘違いしてしまう……ことはまずない。 それほど不気味なたたずまいなのである。

 沖縄王の仲間であるビーンさんと清美ちゃん、それに私の 3人で急遽探検隊を結成し、廃墟の道沿いに歩いてみた。

 車2台が優にすれ違うことのできるくらいの 舗装された道を歩く。平日の昼間、われわれ以外には 人の気配がない。1人で歩くのはちょっと怖いだろうなぁ、 ましてや女性だけでは歩かないほうがいいだろうなぁなどと 思いながら先に進む。

 横文字の落書きが目立つ。外国人の軍人さん(要するに米兵ね)なら、 こういう廃墟は“訓練”向きかもしれない。

 ビーンさんの話では、芸能人だか写真家だかがこの廃墟を使って 写真撮影をしたことがあるとのこと。確かに、どこをどう見ても「廃墟」 そのものだから、「廃墟で撮影したい」という人にはいいのだろう。 しかし、私にはただ気色悪いだけである。

 沖縄王探検隊は早々に引き上げることにした。 だって怖いんだもん。オバケならまだいい。連続殺人犯が 隠れているんじゃないだろうか。強姦魔が潜んでいるのでは ないだろうか。ここで凶悪犯に出くわしても、 近くには人がいないから助けを求めて叫んでも聞こえない に違いない。ということは、われわれ3人はここに埋められる 運命なのか。などと怖い物語を私の脳が勝手に 考えてしまい、びびりまくりなのである。

 中城城跡を出る際、入場料を払ったところで この廃墟について聞いてみた。「あれは海洋博のころに 建てられて、1年くらいでつぶれたらしいよ」。 宿泊施設だったようである。

 広大な土地に建造物の数々(全部廃墟)が 並んでいたのは圧巻である。しかし 30年も前の建物なら、そろそろ片づけるべきだろう。 世界遺産を守るために。(沖縄王・西野浩史)





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