沖縄のガス代はなぜ高い?


 神奈川県平塚市のマンションで7立方メートル使った8月の ガス代(「東京ガス」の都市ガス)は1675円だった。一方、 西原町のアパートで2.2立方メートル使った 9月のガス代(「琉球ガス」のプロパンガス)は2638円だった。 ガス使用量は3分の1以下なのに、ガス代は1.5倍になる計算だ。
 何故こういうことになるのか。沖縄総合事務局 やガス会社の話をまとめると--。

 まず、都市ガスとプロパンガスでは、法律が違う。 前者はガス事業法の適用を受けるので、 ガス会社は国の認可価格によって価格を決めるしかない。 しかし、後者はガス会社が価格を自由に決めることができる。 極端な話、「明日から値上げします」とガス会社は自由に言えるのだ。 したがって、ガス会社によってプロパンガスの価格は異なる。「透明性のない 面があるのは確かです」と某ガス会社は認める。

 それなら都市ガスを引けばいいということになるが、 田舎にまで引っ張るとなると、営利を追求するガス会社にとっては大変なこと だ。沖縄県内では唯一「沖縄ガス」が都市ガス事業をしているが、 それを使えるのは那覇市を中心にごく一部だけ。「沖縄ガス」の都市ガス供給区 域に住む住民が「都市ガスを引いてほしい」と求めたら、 「沖縄ガス」は断れない。しかし、供給区域の外の住民が同様に求めても、 応じてもらえる可能性はほとんどゼロに等しい。 都市ガスの供給区域はガス会社の申請に基づき、国が認可する。 つまり、申請がないと始まらないのである。 そういう地域の人はプロパンガスを使うしかない。

 では、那覇市内で都市ガスを使えば、上記のように 「東京ガス」並みに安いかというと、そうではない。 ひとくちに都市ガスと言っても、中身が同じではないのだ。 端的に言うと、熱量が大きく違う。「東京ガス」は1万1000キロカロリーだが、 「沖縄ガス」は4500キロカロリーしかない。2.4倍もの“能力差”がある。 熱量とは「お湯をわかす際、熱量が高いと早くわく。低いと 時間がかかるうえ使用量が増える」と説明できる。 つまり、同じ結果を出すために、「沖縄ガス」利用者は 「東京ガス」利用者の2.4倍の量を使うことになる。

 ガス熱量の地域差を解消するための動きは始まっており、 2005年度には「沖縄ガス」は1万1000キロカロリーに上げる定だ。 しかし……。「東京ガス」が都市ガスの燃料にしているのは 液化天然ガスだが、これを貯蔵する基地が沖縄にはない。 したがって、同じ熱量になっても、原料が同じにはならないので、 「東京ガス」ほどの低価格は実現しそうにない。
 
 沖縄県の県民所得は日本で一番低い(1998年度)。これに呼応するかのように 沖縄の物価水準は全国で下から2番目に低い(1999年平均)。 ガス会社側の事情(「東京ガス」と比べられる「沖縄ガス」は少しかわいそうで はある)やガス価格を左右するさまざまな要素(供給先が多いほど安くなる、 大量に使うほど単価は下がるなど)を勘案しても、 沖縄のガス代をもう少し低くできないものかと思わざるを得ない。(N)






©2001, 有限会社沖縄王