モダンな入り口


小ぢんまりとした店内


この「紫」を見よ!


本物のはた織機に感動!



住所:那覇市首里池端町1
地図
電話・ファクス:098-887-0120
営業時間:午前10時から午後7時
定休日:月曜
駐車場:ない
ホームページ: http://www.ayasilk.com/



あきやま染織研究所

 現代の名工で染織家の秋山眞和という人物をご存知だろうか?  宮崎県綾町にある「綾の手紬染織工房」の創始者であり、 氏の織り上げた入魂の作品「万華鏡」「陽炎」と名付けられた着物は その素晴らしさゆえ、相次いで文化庁の買い上げとなる。 美智子さま、紀宮さま、紀子さまも氏の着物を愛用しているという。

 な〜んと! その秋山氏のお店が今年(2002年)6月、 首里にオープンしたのだ。何故、沖縄に? 意外や意外、 その「綾の手紬」のルーツは沖縄にあった。

 それは先代の秋山常磐さんに始まる。 眞和氏の父にあたり、戦前沖縄で教鞭を執った後、 沖縄の技法を取り入れた染織業を始める。 戦火が激しくなり、やむを得ず福岡県に疎開するまで、 沖縄で生活を営んでいた。その頃眞和氏が沖縄で生まれる。

 宮崎県で再起された染織業を引き継いだ眞和氏は53年後、 再び沖縄へ。沖縄県立芸大美術工芸学部の教授として招かれたのだ。 父と同じように「染織」を教えるために。 単なる「偶然」ではなく、「必然性」を感じさせる挿話である。

 龍潭池を挟んで、首里城を望む絶好の場所に 「あきやま染織研究所」はある。沖縄の工房はすでに4年前からあったが、 店舗として構えるのは今回が初めてである。県立芸大で師から染織を学び、 今年卒業したばかりという大湾あゆみさんに話を伺った。

 「大学では秋山先生から『本物を見る目を養いなさい』ということを 学びました」。秋山氏のその言葉を象徴するかのように 「綾の手紬染織工房」には3つの大きな特徴がある。

 その1つは「小石丸」という蚕から糸を取ることである。 そうなのです。一口に「染織工房」といっても、染めと織りだけではなく、 その原料から飼育しているのだ。これには私も驚いた。 しかも「小石丸」という蚕は普通の蚕よりも一回り小さい蚕で、 その糸は細くてけば立たないという理想の絹糸である。 皇居でしか飼育されていなかった蚕を3個だけ 譲ってもらい、それから飼育を始めたという。 本物を追求する秋山氏の執念を感じさせる。

 2つ目は、藍である。琉球藍とは一味違う色を出す綾の蓼藍で染める。 古来様式の方法で染めるので藍の天然色を失うことなく染め上げられる。

 3つ目は貝染である。有明海のアカニシ貝からの染料の抽出に成功し、 幻といわれた帝王紫を復元させた。かのクレオパトラも好んで着たという 紫色を氏のおかげで再び目にすることが出来るのだ。

 氏は特にこの貝染に力を注いでおり、織物はもちろんのこと スカーフやハンカチなどの染めにも必ず立ち会い、 自ら染め上げるという。今回特別にショールを見せていただいたのだが、 一目見ただけで、心に焼き付けられるような、とても印象的な紫色だった。 女性なら誰もが目を釘付けにされるだろう。また一つ、 私の夢が増えた。いつの日か手に入れたい! と。 それまでにはこのショールに似合う女性にならねば!

 ほかにTシャツやスカーフ、ネクタイ、ハンカチから財布や 名刺入れなどの小物までを取り扱い、販売している。 店内にははた織機があり、実際にはたを織っている作業も自由に 見学出来る。ちょうどその時は、表裏に同じ模様で 織り上げられるという首里花織りを大湾さんが作成中だった。 今まで動かないはた織り機を何度か見たことのある私だが、 「カタンカタン」と軽やかな音を奏でる「生きている」はた織り機を 見たのは初めてだ。

 店内入り口の壁に首里城の古い写真が飾られている。 かつて先代の常磐氏が教鞭を執っていた頃だと大湾さんは説明してくれた。 かすかに窓の辺りにはた織り機が写っているのが見てとれる。 その写真のはた織り機の伝統が、目の前で実際に動いている はた織り機へと現在も受け継がれてるということを目の当たりにし、 感無量になったのであった。(沖縄王・Kiyomi.G)


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