住所:本部町渡久地4
地図
電話:0980-47-2218
営業時間:午前8時から午後4時30分頃
休み:「風邪を引いた時」
駐車場:ない




刺身をたらふく食べたい時は「政良さしみ店」

 あるじの渡久地政良(とぐち・せいりょう)さんは 1918(大正7)年4月21日の生まれである。

 この年は世界や日本でいろいろな動きがあった。例えば、 32カ国が参戦した地球初の世界規模の戦争・ 第一次世界大戦が終わった。日本では 8月に米騒動が始まり、9月29日には 原敬が初の本格的政党内閣をつくった。

 そんな時代に生まれた人があるじであることは 知っておいたほうがいいだろう。

 昔はいろいろなメニューを用意していた。壁には 今も「焼魚」や「魚煮付」などの 張り紙がある。それはあくまでも名残である。 現在のメニューは魚の刺身(ごはん付き)だけだ。

 運ばれて来たのがこれ(1番目の写真)である。 ご飯の盛り上がりぶりは見事だ。大きなお皿に入った 刺身もまた見事である。

 魚魚(ギョギョ)! ……失礼、話を戻そう。

 刺身皿を見てみよう(2番目の写真)。ミソとカラシで作った たっぷりの汁の中に刺身が山盛りである。刺身の下には きゅうりがこれまたたっぷりある。 刺身がどれくらい入っているか数え始めたが、 18でやめた。何せそれ以上入っているのは確かだ。

 ミソとカラシの汁がうまい。刺身もうまい。しかも多い。 800円で刺身をこれだけ食べられる店を私はほかに 知らない。

 本部の漁港が目の前なので、買いだめしない。 毎日売れる程度しか買わない。刺身は新鮮だ。今回は マグロだ。季節に応じてカツオやカジキなどが出てくる。

 終戦後にこの店を始めた。最初はテントだった。次は トタン、そしてセメント瓦……と歴史を経てきた。確かに店内は レトロ感が漂う。ここではあえて写真を掲載しない。 こういう店に行くのに事前学習をしてしまうと、 新鮮な感動がなくなってしまうからだ。

 注目すべき1つは“シャッター”だろう。 この店の“シャッター”は金属製ではない。 昔ながらの「戸」である。これを上から 数枚降ろして、戸締りする。戸袋が上にある方式を 今も使っている。

 県議など沖縄の政治家の似顔絵と琉歌を 描いた紙(3番目の写真)が壁にたくさん張られている。 渡久地さんが毛筆で描いたのだ。ほとんどが 本部町出身の政治家である。「沖縄県で偉い人が一番 出ているのがこの本部。でも、町は発展しないけど」

 こんな張り紙もある。

 さしみ屋を止めて事ム員になれと 可愛いカマドさんは泣いて言ふた
だけど僕は事ム員にはなれぬ
さしみ屋はさしみ屋の道がある
 政良さしみ店 政良作

 聞けば「カマドさん」は妻であるという。

 なぜ事務員にならなかったのか? 渡久地さんは 淡々とした口調で教えてくれた。「さしみ屋が好きだった。 (この店で)みんなと付き合って話などができるから」。 (沖縄王・西野浩史)

メニュー

魚の刺身 800円




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