ひかり食堂の外観。扉の向こうに「おふくろの味」が待っている


お昼時間をすぎても、常連のお客さんが訪れる


ボリュームいっぱいのソーキそば


「ねだん表」の横に筑紫哲也さんのサイン色紙を発見!


住所:与那原町字与那原423
地図
電話:098-946-5312
営業時間:午前10時30分〜午後7時
定休日:金曜
駐車場:えびす通り商店街共同駐車場



メニュー
そば(大) 400円
そば(中) 300円
肉そば 500円
ソーキそば 600円
焼そば 400円
みそ汁 450円
野菜いため 450円
トーフチャンプルー 500円
につけ 600円
肉汁 500円
チャーハン 400円
オムライス 400円
ライス 150円


おふくろの味と優しい笑顔に出会える
「ひかり食堂」


 与那原在住の友人がすすめてくれたのが、 今回紹介する「ひかり食堂」だ。友人曰く 「与那原で食堂といえば、まず浮かんでくるのはここだね」。 その友人に案内されるまま足を運んでみると、 「ん? ここは確か前に訪れたことがあるぞ」と思った。

 そうそう、思い出した。数年前、私(編集部員S)が まだまともな勤め人だったころ (と書くと、変酋長に「沖縄王スタッフはまともな勤め人ではないんかい?」と ツッコミを入れられそうだが、それはさておき)、 南部への出張の途中でグルメな上司に連れてきてもらったことがある。 出張先の近くに食堂はいくらでもあるはずなのに、 その上司はわざわざ与那原で車を降り、 この食堂に立ち寄ったのだ。 「この近くを通ったら、ここでソバを食べないと損した気分になる」 みたいなことを言っていた。

 かつての私の上司は、今の私の上司(=変酋長)とは違って 口数の少ない人だったが、 ここのソバについて語らせると実に多弁になったものだ。 実はこの上司、すでに他界している。そういえば命日が近い。 もしかすると上司が「沖縄王で紹介したら?」と、 ひかり食堂に導いてくれたのかもしれない。 今は亡き上司のこよなく愛した「ひかり食堂」のソバは、 変わらぬ味で私を迎えてくれるだろうか。 期待に胸をふくらませつつ、店の扉を開く。

 「いらっしゃいませ」。元気な声が出迎えてくれる。 厨房では4人のお母さんたちがせっせと働いている。 「働き者のウチナー女性ここにあり!」という感じだ。 案内役をかってでてくれた友人は、 そば(中)を食べるとすでに決めていたらしく、 一瞬の迷いもなく注文している。 小食の彼女は、この分量がちょうどいいのだとか。 ひるがえって大食漢の私は「さて、どれにしようか」と 壁に張られた「ねだん表」(ここでは、メニューではなく「ねだん表」と 記されている。この表現がまたイイ!)を見る。 ねだん表の隣に色紙が飾られている。誰のだろう? と思って 近寄ったら、ナントあの筑紫哲也さんのサインではあ〜りませんか。 「筑紫さんは何を食べたんだろう」と気になりつつ、 ここは冷静さを装って「ソーキそば」を注文した。

 そうこうしているうちに、 お昼どきの店内は次から次へとやってきたお客さんで、 テーブルはたちまちいっぱいだ。 かつての私の上司のように出張途中に立ち寄った おじさまもこの中にいるんだろうなぁ。そんなことを思っていると、 ソーキそばが登場した。一目見て、 そのボリュームに驚いた。 ウェーブのある麺は有名な照喜名製麺だ。 だしは、豚骨が入っていることもあり、コクがある。 豚骨のにおいをとるために鰹節がふんだんに使われているという。 どおりで、カツオの香りがほのかに漂っている。 ソーキを口にすると、味が十分に染み込んでいて、これがまた おいしい。軟骨部分は一切使わず、本来のソーキ肉だけを使っている。

 「マ〜サン、マ〜さん(うまい、うまい)」と 心の中でつぶやきながら箸を進めていると、 隣にいた友人が「おいしいソーキを食べると、 無口になるんだよね」と言っている。 どうやら、私のことらしい。である。 おいしいものをかみしめていると、ニンマリ幸せ顔になって しまうのだ。友人は言う。 「食べている(私の)様子を見れば、 その食べ物にどのくらい満足しているかどうかわかる」。 すべてお見通しらしい。 ゲゲッ、よまれてる。 「まっ、いいかぁ、お友達だもんね」と思いながら、 ぜ〜んぶたいらげちゃった。 最初に見た時には「ボリューム感がある」なんて思ったのに、 我れながら見事なガチマヤー(食いしん坊)ぶりだ。

 「ごちそうさま」の後、店長の翁長キヨさんにお話をうかがった。 翁長さんは2代目店長さんだ。先代から引き継いで、 今年の10月に14年目を迎えるとのこと。 ひかり食堂の歴史は古く、先代のころから数えると、 実に50年余の時を刻んでいるという。 翁長さんは、先代の味を大切に受け継いでいる。 「久しぶりに店を訪れた人に昔の味と変わらないと 言ってもらえることほど嬉しいことはない」という。 お店を引き継ぐ際、先代は「ひかり食堂」の味を 細やかに伝授してくれたそうだ。 翁長さんは「先代にいろいろと教えてもらったので、私でも こうやって何とか店をやっていけるんですよ」と謙虚に語る。 優しい笑顔とともに「ひかり食堂の味を 守り続けていく」という誠実さが十分伝わってくる。

 だからこそ、常連さんの足が何度も向くのだろう。 遠くはヤンバルから訪れる人もいる。 常連のタクシー運転手さんの一人は、 ひかり食堂に観光客を案内して「につけ」を食べさせることを 独自の観光コースにしているのだとか。 土日は家族連れが多い。お母さんのおなかの中にいたころから 「知っている」子もいる。 そんな子が中学生くらいになって、 家族とではなく、友達と店を訪れることもある。 「まさしく、ひかり食堂の味で成長しているんですね」と 言うと、翁長さんは嬉しそうに微笑んだ。

ひとしきりお話をうかがったところで、 さっきから気になっていたことを尋ねてみた。 筑紫さんが何を注文したのかということだ。 「ちょうど、あなたの座っている席(カウンター奥)で、 あなたと同じソーキそばを召し上がっていましたよ」。 ムフムフ、筑紫さんも私と同じようにぜ〜んぶたいらげたらしいっすよ。 なんだか嬉しくなっちゃった私は 自分の凡人さ具合をあらためて実感したのでありました。 せっかくですから、最後は、筑紫さん風にしめましょうか。 「ハイッ、それでは、今日はこんなところです」




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