緑の香りに包まれた階段をのぼると「風の庭」にたどりつく


テーブルには季節の花が飾られている


絵葉書とカレンダーの販売コーナー


おいしいコーヒーをいれてくれる洋子さんは笑顔の美しい素敵な人だ


入口から見た光景。豊かな自然を独り占めした気分になる


住所:本部町伊豆味1078-4
地図
電話:0980-47-4735
営業時間:午前9時〜午後5時
定休日:火曜・水曜
駐車場:6〜7台


メニュー
コーヒー(アイス・ホット) 400円
紅茶(アイス・ホット) 400円
オレンジジュース 400円
ケーキセット(チーズケーキまたは抹茶ケーキ、コーヒーまたは紅茶) 700円
氷ぜんざい 400円
ホットぜんざい 450円

カレンダー「おきなわの彩(いろ)」 2000円
カレンダー「おきなわの詩」 1500円(特別価格)
絵葉書各種 1枚200円


自然と芸術の豊かさにひたるギャラリー喫茶
「風の庭」


 しとしとと朝から小雨が降り続いていた6月のある日、 豊かな緑に囲まれたギャラリー喫茶「風の庭」を訪れた。 入口までの階段をのぼると、雨で潤った緑がやわらかに香り、 かすかに小鳥のさえずりが耳元に届いてくる。

 その香り、そのさえずりは、店内に入っても 私の元に届いてきた。 店内にはオーナーであり画家である屋良朝春さん・洋子さんの作品が 展示されており、お客さんをさらなる美の世界へいざなう。 朝春さんの描いた沖縄のあたたかな風景画や洋子さんの描いた美しい人物画を ながめながらホットコーヒーを口にしていると、 実にゆったりとした心持ちになってくる。 絵の世界はまったくの門外漢である私(編集部員S)でさえ これほど豊かな時を過ごせるのだから、 「風の庭」は自然と芸術の偉大な力をさりげなく伝え てくれる空間といえる。

 朝春さんは日本現代美術協会常任理事と 沖展会員審査運営委員をしている。沖縄美術界の重鎮だ。 正直なところ、お話をうかがうのに私は少し緊張して いたのだが、朝春さんはアトリエでの製作中の手を休めて 気さくに対応してくれた。

「沖縄の自然をこよなく愛している」と語る朝春さんの瞳は、 作品同様あたたかだ。沖縄の各地で絵を描き続けてきたという 朝春さんが住宅兼アトリエに選んだのが、 この本部町伊豆味の地だった。理由を尋ねると、 「ここではすべての樹が主役だからです」という答えがかえってきた。 「ここの土地といえばこの樹」というようなことがなく、 樹種が多いところがこの地の魅力なのだ という。緑だけでなく、ゆりや月桃など自然の花が きれいに咲いていることも魅力の一つだと付け加えた。 テーブルの上に飾られた美しいゆりの花をいとしげに眺めながら、 「ここに来てから、花を買ったことがないんですよ」と 語った。

 屋良さん夫妻が自宅兼アトリエの一部を開放して ギャラリー喫茶を始めたのは1993年のことだ。 天気のいい日には決まって二人の娘さんと共に庭に出て朝食をとって いたという。ある日、洋子さんがつぶやいた。 「こんな素敵な空間を私たちだけで独り占めするのではなく、 一人でも多くの人たちと分かち合っていくことはできないかしら」。 その言葉が「風の庭」オープンのきっかけとなった。 洋子さんの優しい心遣いのおかげで、 私もこの素敵な空間に身を置きながら豊かな時をすごせたのだから、 心から感謝の気持ちがわいてくる。

 県道84号線からしばらく車を走らせなければ たどりつけない場所にあるにもかかわらず、 遠く沖縄本島中南部や県外からも「風の庭」を訪れる人は多い。 それだけ魅力のつまった空間なのだ。

 朝春さんは一年おきに那覇市内の沖縄三越で個展を開いている。 伊豆味を訪れれば、いつでも作品に出会える。また、 こちらでしか手に入らない朝春さんのオリジナル・カレンダーや 絵葉書なども買うことができる。朝春さんによると、「読書をしたり 小説を書いたりする人もいるのですが、中には、絵葉書を購入し、 恋文をしたためている人もいますよ」とのこと。 「ラブレター」ではなく「恋文」という言葉は この空間にぴったり合う。こんなに落ち着いた豊かな空間で 愛をしたためた恋文が届いたら、私なんか 確実にとろけてしまうなぁ。大切な人に素直な気持ちを 伝えたいというあなた、この空間で一筆したためてみませんこと? 

 恋文をしたためる機会も受け取る機会もなさそうな私だけど、 今度は晴れた日に「風の庭」を訪れてみよう。 小雨でしっとりする風景も素敵だったが、 木漏れ日もきっと美しいに違いない。





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