沖縄とブラジルの味がこの場で堪能できる


自家焙煎のコーヒー豆を手に入れることもできる


店内の一角にあるブラジル産品コーナー。コーヒー味のサーターアンダギーもある


店長の山下さんとお母さん。バックはブラジルの国旗の中に沖縄そばが描かれたブラジル食堂のオリジナル・ロゴ


住所:名護市宇茂佐1703-6
→地図
電話/ファクス:0980-53-5045
営業時間:平日・午前10時30分〜午後6時
土日祝祭日・午前10時30分〜午後7時
定休日:月曜・年始
駐車場:10台


メニュー
ソーキそば(大) 600円
ソーキそば(小) 500円
牛肉そば(大) 550円
牛肉そば(小) 450円
三枚肉そば(大) 550円
三枚肉そば(小) 450円
やさいそば(大) 550円
やさいそば(小) 450円
三点そば(ソーキ・三枚肉・揚げ豆腐) (大) 550円
三点そば(ソーキ・三枚肉・揚げ豆腐) (小) 450円
ごはん 100円
フェイジョアーダ(豆と牛肉の煮込み) 1200円
ポルコアサード(焼豚) 1200円
ガリンニャアサード(チキンの焼肉) 1200円
マカホナーダ(そばゲッティー) 1200円
ブラジルコーヒー エスプレッソ 300円
ブラジル アイスコーヒー 300円
アセローラ生ジュース 400円
コーラ 100円
サイダー 100円
オレンジジュース 100円
自家製ぜんざい 300円
かき氷(オレンジ・メロン・いちご) 100円
かぼちゃとほうれん草のスフレ 300円
りんごとサツマ芋のパイ 300円
自家焙煎コーヒー豆 100g 400円
オリジナルサーターアンダギー(コーヒー・黒糖ゴマ・紅芋・かぼちゃ) 大300円・小100円
三月菓子 大300円・小100円
ブラジルジュース・アンタルチカ 150円
ブラジルジュース・ブラマ 180円
チョコセット(6コ入り) 250円


沖縄とブラジルの味が豊かにとけこむ
「ブラジル食堂」


 オープンから28年目を迎えるブラジル食堂は 地元の人のみならず名護市外の多くの人々からも愛されている食堂である。 沖縄そばと本格的エスプレッソコーヒーという一見ミスマッチとも思える メニューがあることで有名だ。訪れたことはなくても、 「聞いたことはある!」という人も多いのではないだろうか。 そばとコーヒー(?!)という前代未聞の意外な組み合わせと思いきや、 これがなかなかいけるのだ。沖縄そばにもコーヒーにも目がない私(編集部員S) にとってはまさに一石二鳥、大好きな食堂だ。

 何を隠そう、若かりしころ、やんばるドライブデートの際、 よく立ち寄ったものだ。久しく足が向いていないなぁと思い (ん? ということは、最近はデートがご無沙汰ということ?)、 久しぶりにブラジル食堂を訪れてみた。お店に足を踏み入れると、 目の前にコーヒー豆の販売コーナーがある。そうそう、 ここを訪れた時は自家焙煎のコーヒー豆をお土産に買って帰ったものだ。 デートからの帰宅後、楽しかった時間の余韻に自分の部屋で一人ひたりつつ、 コーヒーの香りに包まれたことをふと思い出した。 と同時に、お店の変わらぬ雰囲気を確認でき、 私はちょっと嬉しくなった。

 さらに嬉しくなったことがある。 人気を保ち続けている食堂だけあって、 新たな魅力が加わっていたのだ。それは、2代目店長・山下 明生さんの「これまでのブラジル食堂の良さを基本におきながら、 ブラジル色も出していきたい」という熱い思いである。

 山下さんの父・利明さん(故人)はブラジルで40年間暮らした後、 家族と共にふるさとに戻り、新たな人生を踏み出す決意をする。 戦前ブラジルで日本人学校の教員をしていた利明さんは、 子どもたちに日本の教育を受けさせたいという希望があったからだ。 「年齢を重ねるにつれ、ふるさとが恋しいという気持ちも募っていたのだ と思います」と、明生さんは当時の父の心境に思いをはせる。

 ブラジルで食堂やバール(=バー)を経営していた経験をいかし、 故郷・沖永良部島で店を開こうと思っていた利明さんだったが、 店の経営のためには沖縄本島がいいという判断から、 妻・千恵さんの出身地である名護市内にそば屋さんを構える。 しかし、利明さんが経営したかったお店はそば屋さんではなく、 コーヒー専門店だった。ブラジルのコーヒー農園で勤めた経験があり、 焙煎の方法も知っていた利明さんには、 おいしいコーヒーを一人でも多くの人に味わってもらいたい という強い思いがあったのだ。40年間のブラジルでの生活の中で 日本に1度戻った際、東京の空港で飲んだコーヒーの あまりのまずさに驚いたことが一因だという。 以来、コーヒーの本来のおいしさを伝えたいという思いが 利明さんの胸の内から消えることはなかった。

 「ブラジル食堂」はオープン当初、沖縄そば屋さんであるとともに 海洋博工事に関わる人たちの弁当を販売するという、 どこにでもありそうな地域の食堂だった。 その食堂を切り盛りする一方で、 利明さんは自家焙煎コーヒーの商品開発を独自に続けた。 そして、オープンから3年目に沖縄そばのメニューの 傍らにエスプレッソコーヒーの文字が並んだのだった。

 しかし、当時300円という値段(この値段は今も変わっていない)に 「高い」というお客さんの声があがった。 エスプレッソコーヒーはデミダスカップという小さめの コーヒーカップに入れることから、 「ウッサグヮー(これだけの少量で)」という不満の声もあったという。 それでも、利明さんは本場の味を伝えるため胸を張って コーヒーをメニューに掲げてきた。 順調な滑り出しとはいかなかったが、じわりじわりと コーヒーファンは増えていった。 ここでコーヒーを初めて口にし、コーヒーの世界にはまった人々は 少なくない。帰沖の際、6歳だったという明生さんには、 本場のコーヒーの味にこだわり続けた 父の姿とその父を支えてきた母の姿がしっかりと記憶に残っている。 その両親の背中を見て育った明生さんが 「ブラジル食堂の息子として誇りをもち続けている」ことは 言うまでもない。13年前に他界した利明さんの跡を継ぎ、 しっかりと店の暖簾を守り続けている。

 「基本は沖縄そばとコーヒーです」と言う明生さんだが、 新たな挑戦をしている。 幼いころから「ブラジル食堂なのにブラジル料理は おいていないの?」というお客さんの声を聞いてきたという 明生さんは、食堂を切り盛りしていく中で 1つずつブラジル料理を増やしていった。 第1弾の「フェイジョアーダ」を皮切りに 今では4種類の本格的ブラジル料理が メニューに盛り込まれている。 若いお客さんにも好評だ。 中でも今年1月から登場した新メニューの 「ソバゲッティ」こと「マカホナーダ」は、 沖縄そばの麺にニンニクをたっぷりきかせた牛肉と トマトソースがからめられ、 沖縄とブラジルの味が見事に調和している。 また、店内の一角にはブラジル産品コーナーが設けられており、 「アンタルチカ」や「ブラマ」という 珍しいブラジルの飲み物やコーヒー味のサーターアンダギーなどが 販売されている。

「ブラジルにはおいしいコロッケやケーキがあります。 これから皆さんに紹介していけたらと思っています」と、 明生さんは今後の抱負を語る。沖縄とブラジルという 2つの豊かな故郷をもつ明生さんによって 「ブラジル食堂」は新たな魅力を醸しだしている。 「店が有名になったら味が落ちた」「2代目になったら 先代の良さが消えてしまった」というような評価は、 この「ブラジル食堂」には無縁だ。夫を支え続けた 千恵さんは76歳になった現在も厨房に立ち、 息子の明生さんの新たな挑戦を後押ししている。 先代の利明さんもきっと安心して見守っているにちがいない。 私もファンの一人として、 「ブラジル食堂」のこれまでの変わらぬ味も、 これからの新たな味も愛し続けていこう。





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