手書きの看板すら食欲を誘う

 ここでアーサ三昧

 これが「アーサつけめん」だ

 「『えー!ニーニー』に出すの?」とおどける城間さん


北中城村喜舎場280-4-1F
→地図
電話:098-935-4411
営業時間:ランチタイム 午前11時30分〜午後3時
      夜(居酒屋) 午後5時〜午前0時
定休日:ランチタイムのみ日曜日・夜(居酒屋)は休みなし

<ランチタイムメニュー(午前11時30分〜午後3時)>
アーサ汁定食(ライス・小鉢・天ぷら・漬物付き) 600円
アーサつけめん 600円
アーサ丼(イカスミ汁・漬物付き) 700円
アーサゆし豆腐定食(ふかし芋またはライス・小鉢・天ぷら付き) 700円
アーサジューシー定食 700円
フーチバージューシー定食 700円
イカスミジューシー定食 700円
天ぷら定食(ライス・小鉢・天ぷら・漬物付き) 600円
ゴーヤ−チャンプルー定食 500円
ナーベーラー炒め定食 500円
ナス味噌炒め定食 500円
煮付け定食 550円
牛ハラミモヤシそば 600円
野菜炒め定食 500円
もやし炒め定食 500円
ちゃんぽん 500円
みそ汁 500円
いか天そば 600円
イカスミ汁そば(汚れないようにエプロン付き) 600円
イカスミ雑炊 700円
イカ汁 800円
天ぷら(イカ天・さかな天・アーサ天)持ち帰り可

<居酒屋メニュー(午後5時から午前0時)>
とうふせんべい 350円
カキのウニソースパイつつみ焼き 500円
鳥ササミとパクチョイの中華炒め 500円
白身魚のウニソース焼 350円
豚バラとパクチョイ炒め 500円
アーサ天ぷら 400円
イカバター 450円
その他、アルコール各種

<居酒屋メニュー本日(取材時)のおすすめ品>
メンタイロール 350円
シシャモフライ 400円
イカソーメン 350円
マグロ刺身 500円
タコ刺身 400円
沖縄天ぷら 400円
わさびシューマイ 450円
からしな炒め 500円
とり手羽みそ焼き 400円


アーサのおいしい店「台城(でーぐすく)」

泡瀬方面から北中城村役場向けに車を走らせていた時のことだ。 坂道をのぼりきって、しばらくすると、左側に 「熱田の海で育ったアーサ アーサ汁定食 600円」という手書き の看板が目に入った。「北中城村熱田(あった)のアーサはおいしい」と 前から耳にしていたので、「これはきっと、まちがいなくおいしい アーサ汁に出会えるに違いない」と、 ガチマヤー(食いしん坊)のカンがはたらき、 お店をたずねることにした。

 「何が何でも、看板に書いてあったアーサ汁定食を食べるぞ!」と 意気込んでいたのだが、メニューを見て気持ちが揺らぐ。 「新メニュー アーサつけめん」とあるのだ。 アーサといえばアーサ汁かアーサ天ぷらくらいしか 浮かんでこなかったので、そのメニューには正直、驚いた。 「悪いけど、あなたは今度にするわ」と、心の中でアーサ汁定食に詫びて、 新メニューを注文する。

 しばらくすると、さわやかなグリーンのアーサ麺が やってきた。つゆの隣には小さく切られた大根が添えられている。 好みで大根おろしを加えて食べるというわけだ。 細い麺をツルツルとすすってみると、 期待を裏切らないさわやかな味が口いっぱいに広がる。 これなら、梅雨のうっとうしい季節、あるいは、 これからやってくる厳しい夏の暑さでもしっかりと昼食を とることができそうだ。アツアツあげたてのアーサ天ぷらと魚天ぷらも添えられ ていて、これがまた実にオイシイのだ。 あまりのオイシサにわき目もふらず、すごい勢いで たいらげてしまった。隣の席で見知らぬおじさんが、 私よりも先に「天ぷら定食」を食べていたにもかかわらず、 私が先に食べきってしまったのだ(あのおじさん、実は、 かなり驚いていたはず)。

 食べ終わった私は、お茶を飲みながら、 隣のおじさんが食べている様子を何気なくスーミー(ぬすみ見)してみた。 そして、またもや驚いた。なんと、そのおじさん、 白いホカホカご飯の上にアーサをのせて食べているではないか。 初めて見るその食べ方に「すご〜い!」と思わず感動してしまった。 でもって、「私も食べてみた〜い」と叫びたい気持ちを 必死でおさえた(実際に叫んでしまったら、またしても、 そのおじさんを驚かせてしまうことになる)。

 ランチタイムの忙しさが一息ついた店長の 城間康博さんに早速うかがったところ、 「台城の昼食メニューで白いご飯がつくものには、 必ずアーサが添えられている」とのこと。 好みでアーサに醤油をかけ、ご飯にのせて食べるという、 この「アーサつけご飯」は城間さんがヒラメイタ正真正銘のオリジナルだ。

 ほかにもアーサ料理のメニューは充実している。 女性に好評なのが「アーサジューシー定食」である。 通常の食堂メニューのジューシーの具はポークや肉類が主 だが、「台城」の「アーサジューシー定食」の具は魚がメインだ。 かつおだしでヘルシーに仕上げられている。 出来上がったアーサジューシーは好みでポン酢をかけて食べる。 さっぱりとした食感が人気の秘密だ。

 「アーサ丼」は、ご飯の上にイカソーメン、しその葉、 たっぷりのアーサがのっかり、わさび醤油をかけるという 絶妙の一品である。イカスミ汁がつくのも嬉しい。

 ユニークなのが「アーサゆし豆腐定食」だ。 ゆし豆腐にアーサが入るのもユニークだが、 この定食にはご飯かふかし芋のどちらかを選べる。 昔は、ゆし豆腐とふかし芋のセットで食べることが一般的だった そうで、40代以上のほとんどの人が懐かしがってお芋を 選ぶのだとか。「ライスまたはパンがつきます」というのは よく聞くが、「ライスまたはふかし芋がつきます」なんていう光景は、 世間広しといえども、なかなかお目にかかれないはずだ。

 そして、城間さんのこの夏の一押しが、私(編集部員S)の食べた 「アーサつけめん」だ。ある麺職人と出会った城間さんが、 かねてから考案していたアーサ麺をつくってもらったのだという。 細い麺の歯ごたえや美しい色の出具合など、 城間さん自身もお気に入りの麺に仕上がった。 麺の製作者は「大量生産ではなく、自分で納得のいく麺づくりに こだわる」職人気質の方だそうで、 この熱田のアーサ麺は「台城」以外で口にすることはできない。 まさしく、世界に一つしかない麺といえる。これほどおいしそうなメニュー が揃っているので、「今度、台城に来たら、何を食べようか」と、 お腹いっぱいになっているにもかかわらず、私は真剣に悩んでしまった。

 城間さんが熱田アーサにこだわるには理由がある。 「台城」のある北中城村は世界遺産に登録された 中城城址や国の指定文化財である中村家住宅などを有する 文化の薫り高い村である。しかし、正直なところ「特産品は?」と 問われてもすぐに出てこない。城間さんは「せっかく、 たくさんの人が県内外からこの村に訪れるというのに、 村特有のおいしいものを口にすることもできない」という現状に、 悔しさに似た思いを常に抱いていた。村の特産物を模索していく中で、 城間さんが着目したのは自身が生まれ育った熱田のアーサだった。 城間さんはさらに考えた。食卓で脇役的な存在のアーサを 主役級に抜擢できないだろうかと。そして誕生したのが 「台城」オリジナルのアーサメニューの数々だ。 どれも、とりたて新鮮なアーサをふんだんに使用 しているため、おいしさには定評がある。主役となったアーサだって、 きっと嬉しいに違いない。どこか誇らしげにも見えてくるから不思議だ。 「アーサゆし豆腐定食」につくお芋も、ゆくゆくは 村でとれたものを使っていくつもりだ。

 これだけのオリジナルメニューを次々と考案している城間さんは、 きっと「食の世界」一筋の方だろうと思っていたら、 意外にも「脱サラ組なんですよ」とのこと。10年ほど前から この世界に入り、4年前に「台城」をオープンさせた。 お店の名前は中城城址公園近くの高台の地名に「あやかって」名づけた。 「そこからの絶景を見たら、護佐丸ならずとも 天下をとった気分になりますよ」と、城間さんは笑顔で語る。 話を聞けば聞くほど、城間さんのふるさとへの熱い思いが伝わってくる。 自信をもって地元の素材を扱い、築き上げた城間さんの「食の世界」に触れれば、 北中城村民は一段とふるさとへの誇りを持てるに違いない。 村民でないあなたは、とりあえず、歴史散策やドライブの途中にでも、 一度「台城」に立ち寄り、お腹を満たしましょう。 どれを食べようか迷うかもしれませんが、 どれをとっても、きっと満足できます。



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