温かさが伝わってくる手書きの看板

名物の木灰ソーキ

おいしさの秘密・木灰


住所:那覇市泉崎1-7-7 長山アパート1F
→地図
電話:098-866-0733
営業時間:午前11時30分〜午後7時(水曜日は午後2時まで)
定休日:日曜日


メニュー
木灰ソーキそば(大) 800円
木灰ソーキそば(小) 600円
木灰そば(大) 600円
木灰そば(小) 450円
ヨモギ麺は50円高
いなりずし 1個 50円

4月から10月までの期間限定メニュー
冷し麺(大) 600円
冷し麺(小) 450円
冷し中華 500円
沖縄料理 クーブイリチャー(ご飯・アーサ汁・クーブイリチ−・ミミガーの味噌和 え) 500円


めずらしいそばやさん「木灰そばのみやぎ」

 那覇市役所からバスターミナル向けに歩いていると、 「めずらしい そばや」というノボリを見つけた。どう「めずらしい」 んだろうと思い、お店に入ってみることにした。

 メニューに「木灰そば」とある。これが、きっと「めずらしい そば」 なんだな。お腹がすいていたので、ソーキも食べたいと思い、 「木灰ソーキ」を注文する。

 「めずらしいそばやというノボリにひかれてお店に入ってきた」 ことを告げると、店長の宮城和夫さん曰く「本当に めずらしいんですよ。まぁ、食べてみてください」とのこと。 店長さんが自信をもって言うのだから、間違いない。楽しみにして待 つこと数分、いよいよ木灰ソーキそばの登場だ。

 まずじっくり見てみた。おや? これまで私が食べてきた 沖縄そばの麺の色と明らかに異なっているではないか。 色が黄色いのだ。なんでも、この木灰麺には高血圧や 糖尿病などに効果があるといわれるフラボノイドが 含まれているのだそうだ。フムフム、この黄色い麺こそ 木灰麺であることの証なのだなと感心しながら口にしてみる。

 すると、歯ごたえがある。それでいて、のどごしもいい。 ソーキは実にやわらかい。脂っこくないので、いくらでも食べることが できそうだ。上質の県産豚肉を使用しているとのこと。 納得である。かまぼこもおいしい。こちらは、 元祖八重山かまぼこのウクサンヤという かまぼこ屋さんから仕入れている。 スープをすするってみると、ほんのり甘味がある。まろやかな口当たりだ。 疲れた胃腸をいたわってくれるようなやさしい 味である。残すのがもったいなくて、すべて飲みほしてしまった。

 「他のそば屋さんではスープを残すのに、 この店ではスープも残さずたいらげてしまった」と話す お客さんが多いという。本当に残すのはもったいないという 感じなのだ。それもそのはず。塩分は0.6〜0.7%と少なめ、 通常のお吸い物は塩分が1%というから、 塩分控えめなのがわかる。 くわえて、たまねぎや人参などの野菜のエキス、鰹節、昆布、 しいたけ、生姜、豚骨、鳥骨、島マース、ノンアルコールの 醤油が入っている。化学調味料は一切使用していない。 極めつけは還元水を利用していることだ。これら上質の 素材をふんだんに使ったスープは3時間から4時間かけてじっくり煮込まれる。

 宮城さんは、木灰麺の奥深い魅力を惜しみなく明かしてくれる。 作り方のプリントまで用意されているのだから、実にオープンだ。 そのプリントには以下のように麺づくりの工程が記されている。

 1.自然の木を燃やし灰を作る。(ダイオキシン、発ガン性物質に注意)
 2.アミを透して木灰を取る。(木灰は灰アクをにごらせ麺に色がつく)
 3.灰の2倍ほどの水につけ混ぜながら一晩おき、灰からミネラルをぬく。
 4.上澄みをホーローなどで沸騰消毒。(金属類は穴があく)
 5.コーヒーフィルターなどで上澄みをろ過。(灰がフィルターからもれるので初 め少し灰をフィルターに入れ、水を透してフィルターをふさぐ)
 6.ボーメ比重系で2〜4、塩を入れて7〜12適量にする。
 7.フィルターでろ過して、小麦粉1対灰アク0.45でねる。(沖縄そばは本来強力粉 だが強力粉6薄力粉4でもよい)
 8.1時間程ビニールに入れて、伸ばして、切れば、出来上がり。

 プリントを見ているだけで、木灰そばにかける宮城さんの 情熱が伝わってくるようだ。これだけの工程を経て 誕生する木灰そばは、宮城さんがどんなにオープンに作り方 を伝えたところで、ちっとやそっとじゃ真似できない。 一人でお店をきりもりする宮城さんは 「一日最低14時間は働いてますよ」と笑顔で話す。 そうにちがいない だろうなぁと思う。お店がお休みの日は 木灰をとるためにミネラルのたっぷり入った がじゅまるなどの木を探しに行ったり、 探してきた木をおよそ6時間もかけて焼いたりして過ごすのだとか。

 一口に木を燃やすといっても、3日続けて晴れた日でなければ 燃やすことはできない。木が湿気を含んでしまうからだ。 天候に大きく左右される作業であるだけに、 梅雨の季節はなかなか進まないことがあるという。 木灰麺が出来上がるまでの様子をうかがっていると、 実に頭の下がる思いがする。

 その宮城さんの味の原点は「お母さんの味」だ。 「とりたててそば好きではなかった」という宮城さんが 「おいしい」と思った唯一の沖縄そばは、子どものころに お母さんがつくってくれたものだった。 良い素材を使い、愛情を込めて仕上げるという、 お母さんの味に対するスタンスを譲り受けた宮城さんの つくる木灰そばがやさしくあたたかいのは当然なのであった。

 沖縄そばは本来、木灰麺であったという。 早さと便利さを追求していく時代の流れの中で、 手間隙のかかる木灰麺は次第に姿を消してしまい、 今では「めずらしい」存在になってしまったのだ。 でも、このお店の扉を開けば、本来の沖縄そばの味に出会える。

 宮城さんは「沖縄そばの好みは人それぞれですから、 この味が薄すぎて合わない人もいるはずです」と謙虚に語るが、 沖縄そば通の人も、そうでない人も、本来の沖縄そばの姿である 木灰麺を一度味わってもらいたい。ちなみに、4月から10月までの 期間限定メニュー「冷し麺」もオススメ。もちろん、この麺も木灰麺だ。 つゆも宮城さんの手作り。夏ばてしそうな身体を 木灰パワーが救ってくれることマチガイない。おためしあれ!!



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