那覇市伝統工芸館の体験教室で奥深さに接する

 那覇市伝統工芸館(那覇市当間1-1、電話098-858-6655)では、 琉球ガラスと陶芸(壺屋焼き)、 紅型、漆器の体験教室を催している。見に行ってみた。

 琉球ガラスづくりの施設は炉を抱えているので、 近づくだけで汗が出てくる。その中でコップづくりに 挑戦する子供がいた。といっても、最初から最後まで 作れるほど甘い世界ではない。

 作業の段階ごとに子供は職人さんから 説明を受けている。これなら分かりやすい。要所要所は 職人さんにお任せするしかないが、 自分の手でガラスの形を整える(写真1枚目参照)など 簡単な部分は体験できる。

 炉は2つあり、ガラスの形を整える段階では1300度から 1500度の炉に入れる(写真2枚目参照)。形を整えたあとは、 600度の炉でゆっくり冷やしていく。常温に置くと、 寒すぎてコップが壊れるそうだ。作業時間は10分くらいか。

 あっという間に一丁あがりという印象を抱きやすいが、 それもこれも汗だくになって支えてくれる職人さんの お陰である。職人さんの話では、夏休みには 地元の子供たちが「夏休みの自由研究」用に 作りに来ることがけっこうあるそうだ。肝心の大変な作業を 職人さんにやってもらっていたことに気づかず、 自分で仕上げたと勘違いする子供がいませんように。

 次に紅型の施設をのぞいてみた。ここでは、 配色(色差し)、2度塗り、隈取り(ぼかし)の3段階を 体験できる。いくつかの柄から好きなものを選び、 顔料(写真3枚目参照)を塗るのだ。 紅型では2度塗りすることを私は初めて知っ た。隈取りの際には、2度塗りした部分の色によって 組み合わせる別の顔料が決まってくる(写真4枚目参照)の も初めて知った。やはり奥が深い。

 コースターやテーブルセンターづくりをしている 女の子たちが何人もいた。やはり女の子に人気があるようだ。 みんな真剣な表情で色を塗っている。「塗る」という語感とは違って、 消しゴムで消す時の力の入れ具合と同じ程度の 強さで顔料を塗る。力を入れやすいよう筆を持つ(写真5枚目参照)。 ここでも全工程を職人さんが 手伝ってくれるから心強い。

 紅型は、最初の絵柄作成から型づくり、2度の配色まで 全工程を1人がやってしまう。分業ではないのだ。ということは、 絵づくりの才能や型づくりのための手先の器用さ、 色彩感覚などあらゆる能力を要求される。見習いの人に 聞いたところ、「一人前になるのにかかる時間は 人によって差がある」というから、前述した総合的な実力の 勝負ということか。

 紅型の所要時間は1時間ほどだ。隈取りを終えた布は 数日後に水洗いする。これは各自が持ち帰ってすることになっている。

 ほかに陶芸と漆喰の体験ができる。 いずれも、見慣れた伝統工芸品ができるまでの大変さを身を持って 知るに違いない。それぞれ2500円の費用が かかるけれど、経験から得るものの大きさを考えると、 1回やっておいて損はないと思う。

 駆け足で2ヵ所見ただけの私でさえ、伝統工芸品を 見る目が変わったと実感する。今度は作る側に 回ってみたい。(沖縄王・西野浩史)





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