サンタ姐さんが教える、プライベートホテルの贅沢な使い方

 「ラブホテル」と言ってしまうとある種の印象がつきまとう。 でも、実は「低料金で長時間に渡って空間を独り占めできる場所」として考える 人たちが少なからずいることは、あまり知られていない。

 沖縄市比屋根に「ラブホテル街」と呼ばれる通りがある。 ラブホテルがズラーっと軒を並べ、 夜になるとネオンが灯って不夜城状態になる。 このホテル街の端っこに位置する「サンタ・クルス」は、 今までのラブホとはちょっと違うというウワサを聞きつけ、 さっそく行ってみた! 何と今回お供してくれるのは 我が「沖縄王」変酋長だ! ちょっとトホホな気分になりながらも、何か悪さを しないだろうかという心配の方が大きくて、 まぁ、私はお目付け役という感じで、いざ出発である。

 こんな私たちを出迎えてくれたのは「サンタ・フェ」と 「サンタ・クルス」を経営する「サンタ姐さん」だ(まさに「姐さん」という感 じ)。「サンタ・フェ」と「サンタ・クルス」の部屋やホームページにある落書 き帳には「100%お返事を書く」という 実にマメな人である。そんな姐さんも、旦那様が 「ホテルを経営する」と言い始めた時はかなり躊躇した。 しかし、経営していくうちにホテルに対する考え方 が変わってきた。落書き帳に書かれた利用者の言葉から、 ホテルに何が望まれているのか次第に 見えてきたのである。

 それは「安らぎ」だった。この言葉をカギに2店目の 「サンタ・クルス」(写真上)は、一人でも気軽に来られるような 部屋作りを目指した。「自分の部屋」のようでいて、 プラスアルファのある部屋が完成した。

 いよいよその部屋(写真中)を見せてもらう。 全室にDVD視聴設備とジェットバスが備わっている。 各部屋に置かれた観葉植物が安らぎ感を醸し出す。 観葉植物には3日に1回は太陽を当てるため、 交換用のものを常備してある。 ここでもサンタ姐さんのマメさが発揮されて いる。

 でも、もっとすごい。ベッドカバーは手作りで、 各部屋の色と合わせているので、同じ柄がない。 ベッドカバー用の生地を買うために、 サンタ姐さんは何度となく生地屋を奔走したほどだ。 ソファとテーブルも味わいがあり、部屋に馴染んでいる。 特筆すべきは床である。ピカピカで、ゴロンと 寝っころがることができる。

 いよいよ魅惑のVIPルーム(写真下)を案内してもらう。 最初に足を踏み入れた私の第一声。「キャー!ステキー!!!!!」。これが興奮せ ずにいられようか。まさしくアジアンリゾートだ。 間接照明の当たる壁にかけられたオブジェといい、ソファやテーブル、ゴージャ スなベッドなどがアジアのリゾートホテルを思わせる。「でも、一人で来て泊ま るのは寂しいぁ」と言う 変酋長の無粋な声に、「いいえ、1人だからこそ 贅沢感を味わえるんですよー」とサンタ姐さんが強調する。

 実際、1人での利用がけっこうある。 夏の高校野球の時期になると、外回りの営業マンがやって来る。シャワーを浴び て、 冷房の効いた部屋で高校野球を観戦するのが目的だ。

 正月の時期は、女性の1人客が目立つ。 沖縄の正月は親戚一同が集まり、 女性陣は食事の準備などに忙殺される。「そんな時にふと 時間が空いたら、1人で寛げる場が欲しくなるようね」と 同じ女性の立場で姐さんは解説する。

 男性客が1ヵ月ほど滞在したことがあった。「ここだと仕事に 集中できるので」と言い、数日に1回程度買い物に出る以外は、部屋にこもって いた。そのうち妻子が訪ねてきた。「作家だったのかな? などとスタッフの間 では話題になりました」と 姐さんは振り返る。

 このような利用法を知ると、確かに便利で贅沢な空間 であることに気づく。泊まりたい……。私はあえて声に出さずに 心の中でつぶやく。いつか泊まってやる! 一人で。 もう取材ということを忘れていた。

 <「自分の部屋」を思わせる安らぎ感、 お友達、ファミリー、カップルはもちろんのこと ひとりでだって、サンタ・スタッフは、いつでもあなたをお迎えいたします。そ れまで抱いていた「ラブホテル」という概念をすっかり替え新しいプライベート ホテル像を創りあげたい。 熱い思いを語るのも、無駄に時間を過ごすのも この部屋ならではの理想的な空間創りをめざします> 「サンタ・フェ」「サンタ・クルス」のホームページに記された 言葉だ。あぁ、サンタマジックにハマりそう。 (沖縄王・Kiyomi G.)


 「トホホな気分」にさせちまった変酋長です。
 東京などの都会では、シティーホテルなどが 昼間の数時間を利用できるようにしており、 背広姿の人が仮眠をとったり仕事部屋に使ったり していると聞いたことがある。
 サンタ姐さんに案内してもらいながら、 本を数冊かワープロを持って来てみたいと私は思った。 携帯の電源は切り、1人の時間を楽しむのだ。 贅沢な時間を味わえそうである。しかも、安い。 実際、本土から来たお客さんは「沖縄は安いねぇ」と 驚くそうだ。
 あとは、仕事机とイス、机上を照らす照明が あれば完璧だ。(沖縄王・西野浩史)


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